インターバルを1分→3分にすると筋トレの効果は絶大
筋トレをするときは、各セットの間でインターバルをとりますよね。
きちんと時間を決めている人もいれば、大ざっぱな感覚で休んでいる人もいるのではないでしょうか。
実は、インターバルの取り方によって筋トレの効果も変わるので、インターバルの長さやタイミングは大切な要素なのです。
せっかく筋トレを頑張るなら、できるだけ効果的な方法で取り組みたいですよね。
僕は以前、どの種目もインターバルは1分としてきましたが、今はメニューによっては3分くらい休憩を取ることもあり、そのほうが筋肉がつくことを実感しています。
今回は、筋トレの適切なインターバルの長さとタイミングや、それによって得られる効果について、次のポイントを詳しく解説していきます!
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筋トレのセット間のインターバルが欠かせないのは、筋肉へATPを補充するため
私たちがいつも動けるのは、筋肉がきちんと収縮と弛緩のサイクルを繰り返すからです。
そうやって筋肉が動くためには、そのエネルギー源である「ATP(アデノシン三リン酸)」が欠かせません。
筋肉が動き続けるためには、常にこのATPを分解し続けてエネルギーを生み出す必要がありますが、筋肉に蓄積されているATPは少ないので外部からATPを供給する必要があります。
体内の物質を分解してエネルギーを生成することを「代謝」と呼びますが、筋肉にエネルギーを供給するためにある身体の代謝システムには、次の3種類のものがあります。
- クレアチンリン酸系
- 解糖系
- 酸化系
運動の強度によって、筋肉へエネルギーを供給するための代謝系が変わる
100mの全力疾走やパワーリフティングのような、ごく短時間で高い強度の運動を行うときは、筋肉にある「クレアチンリン酸」を分解することでATPを補充します。
400m走や通常の筋力トレーニングのような中〜高強度の運動になると、筋肉にある糖質を分解してATPを補充します。
この代謝方法を「解糖系」と呼びますが、筋トレの前には十分な糖質を補給する必要があると言われるのは、筋肉が糖質をエネルギーとするためなのです。
クレアチンリン酸系と解糖系の代謝系は、酸素を使わずにATPを補充するため「無酸素性代謝」とも呼ばれます。
筋トレが無酸素運動だと言われるのは、決して呼吸の必要がないからではなく、無酸素性代謝によって筋肉へエネルギーが供給されるからなのです。
その一方で、ランニングやエアロバイクのような軽い運動では、遅筋に多く存在するミトコンドリアの働きによって、酸素を使用してATPを生成します。
そのため、ランニングのような比較的長い時間行う運動は「有酸素運動」と呼ばれるのです。
ミトコンドリアは主に脂質をエネルギーとするため、有酸素運動を行うと脂肪を燃焼させることができます。
運動によってエネルギー生成方法が異なる
- クレアチンリン酸系…短時間で高強度
- 解糖系…中〜高強度の運動
- 酸化系…長い時間行う運動
筋トレで主に活用される速筋は、スタミナが切れやすい
筋肉の種類には、大きく分けて「速筋(そっきん)」と「遅筋(ちきん)」の2種類がありますが、筋トレでは主に速筋が使用されます。
この筋肉は瞬発力が高いのですが、その反面スタミナがすぐに切れてしまいます。
筋トレを1セット行うと、筋肉は消耗してパワーを発揮できなくなります。
インターバルの時間が短すぎると、筋肉がスタミナを回復できないため、次のセットでは筋肉に十分な刺激を与えられません。
そのため、筋トレのインターバルをとるべきタイミングは、「1セットのトレーニングが終わるたび」ということになります。
セット間にインターバルをとるのは、筋肥大を効果的に行うために大切な要素なのです。
では、どれくらいのインターバルをとるのが最も適切なのでしょうか?
技術の発展にともない、近年では筋力トレーニングを科学的に分析することが可能になっています。
アミノ酸の安定同位体を用いて、筋タンパク質の合成作用を計測することにより、どのようなトレーニング方法が効率的なのかを解明する研究が進んでいるのです。
筋トレによる一時的な成長ホルモンの増加は、筋タンパク質の合成作用を高めない
これまでの定説では、セット間の休憩時間を1分くらいに抑えることで、成長ホルモンの分泌量が増加して筋肥大が効果的に行われると言われてきました。つまり、セット間のインターバルは1分程度が最適だとされてきたのです。
実際に、2010年にクルディスタン大学のRahimi氏らが行った研究では、短いインターバルが成長ホルモンの分泌量を増加させることが実証されました。
被験者はベンチプレスやスクワットを4セットずつ行い、セット間のインターバルを1分・1分半・2分と変更したところ、インターバルが短いほど成長ホルモンの濃度が高くなったのです。
しかし、筋トレにおけるセット間のインターバルは1分程度が最適という定説は崩れつつあるのです。
一時的な成長ホルモンの増加は筋肥大を促進させないので、短時間のインターバルにはメリットが少ない
実際に成長ホルモンが増えると筋肥大の効果も高まるのかを検証するため、2012年にマックマスター大学のWest氏らが、筋肥大に関係すると言われている要素についての研究結果を発表しました。
被験者に筋トレを12週間行わせたところ、除脂肪体重が約20%増加しました。
筋肉量の増加に対する、成長ホルモンやテストステロン、インスリン成長因子の影響を調べましたが、成長ホルモンの分泌量の増加と筋肥大には、関連性がないことが分かったのです。
こういった経緯から、筋トレによる一時的な成長ホルモンの増加は、筋肥大を促進させるものではないと結論づけられました。
筋肥大は特定のホルモンによって生じるものではなく、筋トレによって動員された筋肉の細胞内機構が、筋タンパク質の合成作用を促進させるためだと分かったのです。
つまり、これまで定説とされていた1分ほどの短いインターバルでは、特に筋肥大が効果的になるわけではないのです。
短いインターバルでは筋肉のスタミナが十分回復しないため、トレーニングのパフォーマンスも低下してしまいます。
では、どれくらいのインターバルが適切なのでしょうか?
インターバルを長めにとったほうが、筋肥大の効果が高まることが実証された
適切なインターバル時間はどれくらいなのかを調べるため、2016年にバーミンガム大学のMcKendry氏らは、セット間のインターバルを変えて筋タンパク質の合成作用がどう変化するのかを検証しました。
その結果、トレーニングから0〜4時間の筋タンパク質の合成率に、大きな違いが出ました。
1分程度の短いインターバルをとるよりも、5分ほど休憩を挟む方がおよそ40%も筋肥大の効果が高くなったのです。
トレーニング終了後から4時間は、身体のタンパク質吸収率が高まり、筋肥大が最も効果的に行われる「ゴールデンタイム」と呼ばれる時間帯です。
この重要な時間帯の筋タンパク合成率が高まると、筋肥大もより効果的に行われます。
つまり、セット間のインターバル時間は、5分程度とるのが理想的だと考えられるのです。
インターバルの時間が短すぎると筋肉のスタミナが十分に回復しないので、無理せず最低でも3分くらいのインターバルをとる方が、パフォーマンスの点でも筋肥大の点でも効果的なのです。
セット間のインターバルを長めにとると、筋肉の疲労を軽減することができる
筋トレでは、クレアチンリン酸系もしくは解糖系の無酸素性代謝が起きることは、ニュージャージー大学のRatamess氏らによって2007年に実証されました。
この実験では、被験者がベンチプレスを5セット行うときのエネルギー消費量を計測しました。
まずは、セット間のインターバルを30秒として実験したところ、トレーニングで消費されるエネルギー量は、やはり無酸素性代謝が必要なレベルまで上がることが分かりました。
このことから、セット間の休憩時間が短いと、筋肉のスタミナ消費も激しいことが示唆されました。
それから、休憩時間を3分に増やして行ったところ、なんとトレーニングのエネルギー消費量が短いインターバルのときよりも下がったのです。インターバル時間を長くすることで、無酸素性代謝の回復が高まるためだと考えられます。
負荷の強いトレーニングを行った後は息が荒くなりますが、これは有酸素系の代謝を行うことで、クレアチンリン酸系にATPを補充し、解糖系へ乳酸の再利用を促すためです。
つまり、インターバルを延ばして呼吸を整えることで、クレアチンリン酸系と解糖系の両方の代謝系を回復させられるのです。
長めのインターバルをとることで、エネルギーを再補給してトレーニングの負荷も上げられる
前述したように、インターバルの時間を2〜3分程度と長めにとることで、無酸素性の代謝系を回復させて、筋肉のエネルギー不足が軽減されやすくなることが分かりました。
それだけではなく、先ほどのRatamess氏らの研究ではトレーニングの総負荷量も計測していました。
インターバルを30秒と短くとった場合に比べて、5分の休憩を挟んだときは総負荷量が大きく増加したのです。
つまり、セット間のインターバルを長めにとることで、高強度の筋トレに欠かせない無酸素性代謝によるATPを補充して、筋肉のスタミナを回復させやすくなることが実証されたのです。
その結果として、トレーニングの総負荷量を高められる可能性があることが示唆されました。
すべての種目で3分ものインターバルをとると、筋トレの時間が大幅に長くなってしまう
これまで紹介してきた研究の結果から、筋トレのセット間にとるインターバルは、1分ほどの短い時間ではなく、2〜3分に延ばす方が筋肥大の効果を高められることが分かりました。
筋肥大の効果を高めたいのなら、インターバルの時間を延ばしてみるのがオススメです。
しかし、ここで大きな問題があります。
通常のトレーニングメニューは、インターバルを1分程度に見積もって組み立てることが多いです。
そのため、全ての種目でインターバルを2分以上に延ばしたら、筋トレにかかる時間が大幅に長くなってしまうのです。
6種目のトレーニングを60分で終えられるようにメニューを組んでいる場合、インターバルを1分延ばすと80分以上は掛かってしまうことになります。
「筋トレの総合時間は長くとも1時間以内でまとめるべき」だと言われているので、ここまで長くなってしまうのは大きな問題です。
筋トレの時間が長くなりすぎるとコルチゾールの分泌量が多くなり、筋肥大の効果を阻害してしまう
筋トレを1時間以内に抑えるべきなのは、それ以上長くなると「コルチゾール」と呼ばれるホルモンの分泌量が多くなってしまうからです。
コルチゾールはストレスホルモンとも呼ばれていて、精神や身体がストレスを感じると分泌されます。
基本的には精神上のストレスを感じたとき、それに対抗するエネルギーを生成するためのホルモンですが、筋トレなどの運動中でも筋肉がストレスを感じて分泌されます。
特に、筋トレの時間が長くなると筋肉のストレスやエネルギー不足が強まるので、コルチゾールの濃度もより高くなってしまうのです。このホルモンの厄介なところは、エネルギーを生成するために筋肉を分解してしまう点にあります。
つまり、筋トレの時間が長くなると、頑張ってトレーニングしてもその効果が薄れてしまうのです。
インターバルを種目に応じて設定すると、短時間で効果的な筋トレができるようになる
筋トレの効果を高めるためには、セット間のインターバルを長めにとることが推奨されます。しかし、その反面で筋トレのトータル時間が非常に長くなってしまうことが問題です。
そのため、種目に応じてインターバルの時間やタイミングを調整してみるのがオススメです。
種目ごとにインターバルの長さを細かく設定することで、可能な限りトータルの時間を抑えつつ、十分なインターバルをとることができます。
コンパウンド種目ではインターバルを長めにとり、アイソレーション種目では短めにすると効果的
さて、セット間のインターバルを延ばしつつもトータルの時間を抑えるには、どうすれば良いのでしょうか?
最も簡単で効果的な方法は、重いウエイトを扱う「コンパウンド種目」ではインターバルを長めにして、やや軽めのウエイトで行う「アイソレーション種目」では短めにする方法です。
コンパウンド種目はヘビーなウエイトを使用するため、筋肉のスタミナを回復させるために時間を要する
コンパウンド種目とは、重いウエイトで複数の筋肉を同時に鍛えられる種目のことです。
例えば、ベンチプレスやスクワット、デッドリフトのような種目です。
こういった種目ではかなりヘビーなウエイトを使用するため、1分程度の短いインターバルでは筋肉のATP補充が十分に行われず、次のセットでパフォーマンスを発揮しづらくなります。
コンパウンド種目の目的は、重いウエイトで複数の筋肉に強い刺激を与えることなので、筋肉のパフォーマンスが低下している状態で行うのは本末転倒です。
多少時間をかけても、筋肉のスタミナを十分に回復させて、次のセットを万全の態勢で臨むほうが筋肥大効果も高くなるのでお得です。
コンパウンド種目では2分〜2分30秒くらいのインターバルを目安にすると良いでしょう。
どうしてもトータルの時間が長くなってしまう場合は、コンパウンド種目を優先させるためにアイソレーション種目を1つ減らしましょう。
アイソレーション種目ではウエイトが軽めで筋肉の疲労も少ないため、インターバルはやや短めで良い
アイソレーション種目とは、基本的に1つの筋肉に的を絞った種目のことで、ダンベルフライやサイドレイズのような種目が該当します。
これらの種目は重いウエイトを扱えないため、コンパウンド種目と比べると設定重量は軽くなります。
また、筋肉に最大限に負荷をかけるのはコンパウンド種目で行うべきなので、アイソレーション種目は補助的に行って軽めの重量でピンポイントの刺激を与えるべきなのです。
アイソレーション種目は筋肉のATP消費量も少なくなり、やや短めのインターバルでも筋肉を十分に回復させることができます。
これらの種目では、インターバルの長さは1分〜1分30秒程度で良いでしょう。
種目間のインターバルはできるだけ短くしよう
セット間のインターバルを十分に取るぶん、種目間のインターバルはできるだけ短くしましょう。
そもそも、ジムで次のマシンへ移動したり、ダンベルを変更するための時間が取られたりするので、あえて種目間のインターバルをとる必要はないのです。
これまで解説してきたことを実践すると、1日のメニューを3つのコンパウンド種目と3つのアイソレーション種目で組んでも、1時間以内で十分に終わらせることが可能になります。
例えば、インターバルを次のように設定すると、合計時間は約60分となります。
- コンパウンド種目は4セット、アイソレーション種目は3セットとする
- コンパウンド種目のインターバルは2分30秒に設定する
- アイソレーション種目のインターバルは1分30秒に設定する
- 1セットに要する時間は1分、種目間の移動や準備時間は2分とする
1つのコンパウンド種目の時間は11分30秒、1つのアイソレーション種目は6分で完了できます。
種目間の時間を入れても、トータル60分前後でトレーニングを終えられる計算になります。
このように、ただ研究結果にしたがってインターバルを延ばすだけではなく、種目に応じて臨機応変に設定することで、トレーニングのメニューを大幅に変えることなく筋トレの効果を高めることができるのです!
アラーム付きの腕時計を使用して、インターバルの時間を適切に管理しよう
せっかくインターバルの時間を設定しても、トレーニング中にそれを実践できなければ意味がありません。
ジムと自宅それぞれの状況に応じて、適切な方法でインターバルを管理しましょう。
ジムには壁時計が備え付けられているはずですが、アナログ時計の場合は秒針を注意深く見ていないと見逃してしまいます。
また、インターバルが1分30秒のような中途半端な場合は、いちいち秒針の位置を覚える必要があるので面倒ですよね。
インターバルの計測には、アラーム付きの腕時計を使用するのがオススメです。
特に、バイブレーション機能がついていると、時計を見ていなくてもインターバルの終了が分かるので、とても使いやすいです。
自宅でトレーニングする場合は、自由度が高いので自分の好きな方法でインターバルを管理できます。
最も安価で手頃な方法は、キッチンタイマーを使うことではないでしょうか。
アラーム音が不快な場合もありますが、ボタンを押すとすぐにカウントできるので便利です。
セット間のインターバルを適切に設定して、筋トレの効果を最大限に高めよう!
今回は筋トレの適切なインターバルの長さとタイミングや、それによって得られる効果について詳しく解説してきました。
筋トレのインターバルをとるタイミングや長さは、軽視されがちですが意外と重要なポイントです。
全てのトレーニングで1分のインターバルを一律にとるよりも、2〜3分と長めにする方が筋肥大の効果が高まるのです。
ただし、インターバルを延ばすとトレーニングの合計時間が長くなりすぎるので、種目に応じて適切な長さに設定することがオススメです。
自分のトレーニング方法やメニューに合ったインターバルを設定して、筋トレの効果を最大限に高めましょう!
また、筋肥大効果を高めるにはインターバルだけではなく、適切なセット数や回数(レップ数)も欠かせません。
こちらの記事も確認してください。
以上、「筋肥大の最適なインターバルは2-3分の理由を解説、効率的に筋トレしよう」でした!